シリーズ/人体の神秘 ミクロアドベンチャー 第1話:魔法の水 ~唾液~

パクッ、モグモグモグ・・・・

「んんー、さすが特上カルビじゃ、美味しいのぉ~、アルボ君」
「あっ、ちょっと、ヨネゾ博士、人の分まで食べないでくださいよー」

「あれっ、そうだっけ」
「まったく、博士はいつもとぼけてばかりなんだからー」

ちょっと途中ですが、こんにちは、西口店の井岡です

医学博士であるヨネゾ博士
将来の夢は冒険家というアルボ君
なんだか2人は焼き肉のことでもめてるようですよ

もう少し会話を聞いてみましょう

「でもアルボ君、この焼き肉カルビ、わしの口の中には入っとるのじゃが、まだ、わしの体の外にあるぞぃ」
「・・・・。博士、なに意味不明なこと言ってるんですかー」

「体の中は、体の外なんじゃよ」
「ん?中は外?って…ますます分かりません」

「ヨネゾ博士、それって…、どういうことですかー
「口から物を食べたら、やがて、うんちとなって出てくるじゃろ」

お食事中のかたすみません

「口から肛門までは1本の長い管になってるんじゃ。
ほっぺたも、ほっぺたの裏側も、自分の指で触ることができるじゃろ」

「はい、触れますよ」

「口の奥だって、その延長線上なんじゃよ。例えて言えば、体の中に大きな筒が入っているとすると、筒の入り口が口で、出口が肛門ということじゃ。」

「博士、ということは、筒の内側は、体の外ってことですか
「その通りじゃ。体の中に入っても、外界と繋がっとる世界なんじゃよ。」

「ん~、なんだか博士に騙されてる気がするけど。
でも一体どんな世界なんですか?」

「アルボ君、人間の体の中は、とっても神秘的な世界じゃよ
わし達を含めた自然界に生きるすべての生き物は、食べ物を体の中に取り込んで、体にとって必要なものを作ったり、分解して取り出したエネルギーを使って動いたり、要らなくなった残り物を出して、生きとるんじゃ」

「へぇー、体の中って、色々なことをしてるんですねー」

「そうじゃな。体の中の筒というのが消化管と呼ばれる管なんじゃ。体にとって必要なものを取り込むために、色んな工夫があるんじゃぞぃ」

「博士、なんだか面白そうですね。なんか見てみたいなぁー

どうやらアルボ君は、からだの中という未知の世界にワクワクしてきたようです

「よし、じゃぁ実際に見に行ってみようかのぉ

「えっ、博士、見に行くって、一体どうやって行くんですか?」
「わしが発明したミクロマシーンなら、体をミクロの単位まで小さくすることができるんじゃ。
「博士、ホント?」

「そして、わしが発明したミクロアドベンチャー号で行くんじゃ。これに乗ればどんなところにだって行けるぞぃ」
「わー、凄いっ、博士

私たちヒトの体はとても神秘に満ち溢れた世界です
そんな神秘の世界へ、ミクロアドベンチャー号に乗って冒険してみましょう

「わわわぁー、博士ー、まわりがどんどん大きくなっていくー」
「ハハハ、アルボ君、わし達がどんどん小さくなっとるんじゃよ」
「あ、そっか。なんかドキドキしてきたぞー

さぁいよいよ出発です。それでは、ヨネゾ博士、アルボ君、いってらっしゃ~い

「あ、博士、いいタイミングで食事をしている人がいますよ。
あれっ、あの人、TVのお願いランキングに出てる美食アカデミーの川越シェフに、ちょっと似てるなー」

「アルボ君、それはどうでもいいけど。
よし、ではあの人の体の中入っていくぞぃ。よしっ、口が開いた、突入じゃー」

アーーン
モグモグモグ
(うん、美味しいぃー

「わぁー、博士ー、目が回る~、助けてー
「わしもじゃー、えーッと、
安定装置防衛シールド、スイッチON。ふー、さぁこれで大丈夫じゃ」

2人は無事に口の中に入ることが出来たようです

「どうなってるんですかー、博士」
「今は、食べ物を噛み砕いてよく混ぜて、柔らかくしているんじゃよ」

「ところで博士、なんですかこれ?壁や地面から大量の水が、どんどん溢れ出てきますよ」
「アルボ君、これは唾液じゃ。とっても大切な働きをしてるんじゃ」

そうです。この壁や地面から出てきている正体は唾液です
唾液はとても重要な働きをしています

消化を助ける酵素というものを出したり、食物成分を溶かして味覚を起こしてくれたり、食べ物を滑らかにして噛み易くして飲み込みやすくしたり。
口の中の粘膜を保護して、口の中を湿った状態にして、口の中と歯を清浄に保ってくれて、抗菌作用なんかもあるんです

「博士、こんなにたくさん、一体どのくらいの量でるんですか」
「唾液の大部分は水分で、およそ1日に0.5リットルから1.5リットルも分泌されているんじゃ。そして、唾液にはサラサラしたものと、ネバネバしたものと2種類あるんじゃ。」
「へぇー、そんなに出てるんですか」

では、どうのようにして唾液が出てくるのしょうか

唾液の分泌は自律神経とういう神経によって調節されていて、口の中にある唾液腺というところから出てくるのです

「無条件反射といってな、口の中に食べ物が入ってくると、粘膜が刺激されて自動的に出るようになっとるんじゃ」
「へぇー、なんか難しそうだけど、良くできてるんですね」

「アルボ君、その他にも条件反射といってな、感覚を刺激しながら食べ物と組み合わせて条件づけしても出てくるんじゃよ」

「博士ー、なんだか難しいよ~、条件反射?それってなんですか?」

「そうじゃな、例えば、ワンちゃんに餌をあげる時に必ずベルを鳴らすことにしよう。
餌とベルを条件づけるんじゃよ。そうすると、ワンちゃんはベルを鳴らすだけで
反射によって唾液が出るんじゃ。昔ロシアでなされた有名な研究でな、パブロフの犬と呼ばれとるものじゃ。ベルを鳴らすと餌だと思って唾液が出るようになるからのぉ、餌をあげなくてもベルを鳴らすと唾液が出るんじゃ」

「んー、なんだか、ワンちゃん可哀そう~」

あれ、アドベンチャー号の前に何やら近づいてきましたよ。
ヨネゾ博士とアルボ君、大丈夫でしょうか

「わぁぁー、博士ー、目の前にお化けがー、たくさんいる~。たっ、助けて~」
「ハハハ、あれはお化けじゃない、細菌じゃよ。大丈夫じゃ、ほれ、見てみんしゃい」

「あ、あれっ、溶けちゃった」

「唾液は魔法の液体なんじゃ。細菌もやっつけてくれるしな。
歯を修理してくれるのは歯医者さんだけど、虫歯菌と戦ってくれてれいるのは唾液なんじゃ」

「よく噛むとたくさんの唾液が出てくるんじゃよ。
噛んで食べることは、消化に良くって、口臭や虫歯の予防にもなるし、脳も刺激され活性化するんじゃよ」
「唾液って、凄いんですね」

「ここで大切なことは、きちんと噛むという働きを、きちんと使う、ということなんじゃ」

ヨネゾ博士のおっしゃる通りですね
もともと人が持っている働きを、正しく使うということが大切なことなんです

「なるほど博士、だから良く噛んで食べなさいっていうんですね。」
「そうじゃな、噛む回数は食べ物によってもちろん違うけど、口に入れたら50回以上は噛むようにした方が良いじゃろな」

「アルボ君、ほれっ、ハァ~、どうじゃ、わしの息は」
「うっ・・・・・

今日のアルボ君は、良く噛むことや、唾液の大切さについて理解することができたようです

ミクロアドベンチャー号に乗って冒険を始めたばかりのヨネゾ博士とアルボ君。
この先どんな出来事が待ち受けているのでしょうか

モグモグ、モグモグ。モグモグ、モグ。ゴックン…

「うわぁー、博士~、飲み込まれた~」

つづく
(もし2人が無事であればですが)

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