シリーズ/人体の神秘 ミクロアドベンチャー 第10話:体の中は外の世界(最終話)

「博士、ひょっとして小さくなり過ぎたんじゃ・・・」

ヒューッ、スポッ

「あっ、取り込まれる~、助けて~」

こんにちは東口店の井岡です人体の神秘に魅かれ、ヨネゾ博士と一緒にミクロアドベンチャー号に乗って、人体の中へとミクロの冒険を始めたアルボ君
前回は小腸の働きについてみてきましたが、どうやら今2人はちょっとピンチのようですよ。小腸の壁に吸収されようとしています。さて、どうなってしまうのでしょうか。では2人の会話に戻ってみましょう

「博士っ、早くなんとかしてください~」
「そうなんじゃが、えーっと・・・」
「さっきまでの大きさに戻れないんですか?」

「あっ、そっか。さっきまでの大きさに戻るスイッチON」

「あれ、おかしいのぉ。もう一度、スイッチON

「ありゃ?」
「どうしたんですか?」
「ん、おかしいのぅ、スイッチがきかんぞぃ

「うぁ~博士ー、助けて~」

・・・ ・・・

「あれっ、博士、壁の動きが止まりましたよ。」
「ん、ホントじゃ。」

「ふー、よかった~」
「ひとまず安心のようじゃな。」

「でもどうして止まったんですか?」
「ちょっと分からんのぅ。」

カタカタ

「ん、博士、何か言いましたか?」
「いいや、何も言っておらんぞぃ。」

カタカタッ、カタカタッ

「ん、何か聞こえますよ。何の音だろ?」

ガガガ、ガガガ、ドンドン、ドンドン

「博士、なんだか外の様子がおかしいですよ。」
「えっ?」

ガガ、ガガ、
ポポポ ポカフェィ ポポポカフェィス

「ん?なんだか外は盛り上がってるようじゃのぉぅ
「そんなわけないでしょ

「どれどれ、んっ?
ア、アルボ君、大変じゃ、アドベンチャー号が攻撃されとるぞぃ
「えーどうしてですか?」

「こ、これは・・・大変じゃ、免疫反応が起こっておるんじゃ~」
「えっ、一体どういうことですか?」

「そういうことじゃったか。アルボ君、体内にとってわしらは異物なんじゃ。」
「異物?」
「そう、体にとってみれば有害な侵入者ということじゃ。胃酸にも溶けずにここに入ってきたからのぉ。」

「博士、あの絨毛(じゅうもう)の隙間にある基地みたいなところから攻撃してきてるようです。」
「あれは、パイエル板(ぱいえるばん)と呼ばれるリンパ節じゃ。」
「何ですか、それ?」

「体を防御するために免疫機構があるんじゃが、その免疫細胞たちがたくさん集まっているところなんじゃよ。」

「小腸においてはパイエル板の免疫細胞(リンパ球)が体に有害な物質を撃退しているんじゃ。」

「ってことは、いつも体を守ってくれているんですね。」
「そうじゃ。」

「免疫くん、ありがとー!んー、でもこの状況では僕達が異物で攻撃されてるってわけなんですよね。」
「そういうことじゃ。」
「なんか複雑な心境ですけど・・・博士なんとかしてください~」

「よしっ、こういうときはじゃな・・・それっ逃げろ~、全速前進~

「ふー、ここまでくれば大丈夫じゃ」
「助かったー」

どうやらアルボ君と博士は無事に先に進むことができたようですね

「博士、この先に何か見えますよ。」
「あれは、回盲弁(かいもうべん)じゃ~。小腸の先は大腸といってのぉ、そのゲートの部分を回盲弁というんじゃよ。」

「あっ、ゲートが少しずつ開いてきました」
「よし、先に進むぞぃ」

アルボ君とヨネゾ博士は回盲弁を抜けていよいよ大腸にやってきたようです

「博士、大腸って?」
「消化管の最後のところじゃよ。長さにしたら成人で1.5mくらいかのぅ。盲腸(もうちょう)・結腸(けっちょう)・直腸(ちょくちょう)の部分からなっておるんじゃ。」

「何をしてるところなんですか?」
主な役割としてはじゃな、食物の残った栄養分の処理や水分を吸収して便をつくるんじゃよ。

「結腸のところでそれが行われておるんじゃ。それで、上行(じょうこう)結腸・横行(おうこう)結腸・下行(かこう)結腸・S状結腸へと蠕動運動(ぜんどううんどう)によって運ばれ、直腸から肛門を経て排出されるというわけなんじゃ。」

「アルボ君、わしらの腸の中にはたくさんの細菌おるんじゃ。」
「えー、なんかちょっぴり怖いです。」

腸内細菌といってな、100種類以上100兆個以上もの菌がおるんじゃよ。」
「えー、そんなに」
「そんなにいて大丈夫なんですか?」

腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)といってな、細菌たちは共生関係にあってうまく数のバランスをとっておるんじゃよ。宿主(しゅくしゅ)であるヒトも共生関係にあってお互いが良い関係にあるんじゃよ

「共生?なんだか難しそうですけど、どういうことなんですか?」

そうじゃな、例えば食物繊維の分解をしてエネルギーを作り出して提供してくれたり、外部から進入した病原細菌から守ってくれたりしてくれているんじゃよ。

「なんかイメージと違って、とってもありがたいんですね。」
「そうなんじゃ」

「一般的にわかり易い例えとしては、善玉菌・悪玉菌と呼ばれているやつじゃ。」
「聞いたことあります。」

善玉菌の代表的なものはビフィズス菌などの乳酸菌じゃよ。乳酸や酪酸など有機酸というものを作るんじゃ。」
「あっ、ヨーグルトですね。」
「まぁそうじゃな。お腹にいいんじゃよ。」

悪玉菌にはウェルシュ菌や大腸菌などが有名じゃな。悪臭のもととなるいわゆる腐敗物質を産生するものを指すことが多いぞぃ。」

「悪玉菌は発がん性のある物質を作るんじゃ。」
「えー、やっぱり怖いんですね。」

「大切なのは細菌たちの数のバランスなんじゃ。悪玉菌は有機酸の多い環境では生育しにくいものも多いからのぉ。」
「そっか。善玉菌が悪玉菌よりも多ければいいんですね。」
「そういうことじゃな」

プゥゥ~

「うっ…」(博士のお腹の中…絶対に悪玉菌が多いに違いない)
「おぉ、すまんすまん」

お食事中の方すみませんm(_ _)m

ギュルルルゥ

「博士、何か聞こえますよ。どうしたんですか?」
「うん、いよいよじゃな。アルボ君、そろそろ始まるぞぃ。」

ギュルルルゥ、グゥ―、ガガー

「えっ、いったい何が起きるんですか?」

ガ―ガ―、ウララァ
「アルボ君、盛り上がってきたようじゃぞぃ

「博士、なんだか様子が変ですよ。何が始まるんですか?」
「うん、大蠕動(だいぜんどう)が起こるんじゃ。」
「えっ、何ですかそれ?」

「作った便を大腸の運動によって一気に外に出すんじゃよ。そろそろじゃから、しっかりつかまっておるんじゃぞぃ。」

ギュルルルゥ、グ―、グルゥゥゥ

「さぁ、きたぞぃ」
「うぁ~博士~、目が回る~、ジェットコースターみたい~」

ポチャン

どうやら2人は人体から出てきたようですね

「ここは、どこですか?」
「体の中から出てきたところじゃよ」
「もとの世界に戻って来たんですね。はぁ~無事で良かった~」

「アルボ君、人体の冒険はどうじゃったかぃのぅ?」
「はい、ちょっと怖い思いもしましたけど、とても神秘的で勉強になりました

「外に出てきたということはじゃ、体の中なのに外の世界という意味が分かったかな?」
「はい、消化吸収されて体の中に取り込まれたら中の世界ということですよね。体の中なのに外の世界に繋がっているなんて不思議ですね
「そうじゃな。」

消化管の冒険を終えたヨネゾ博士とアルボ君。人体の神秘をたくさん見ることが出来たようですよ。人体には色々な工夫があってうまく働いているんですね

「んっ、ところで、ここはトイレでしかも便器の中ということですよね
「まぁ、そういうことじゃなぁ。」
「ってことは・・・

カラカラカラ、ジャァーー

「うぁ~、博士~、流されてる~、助けて~、目が回る~」
「わしもじゃ~目が回るぞぃ~」
「もとの大きさに早くもどしてくださーい」
「えーっとスイッチどこじゃったっけかな~」
「助けて~

おわり

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